HipHopは人生の教訓

HipHopという素晴らしき教材の広報活動および自分のこと少し語るブログです。

監獄ラッパー/B.I.G. JOE

 

こんにちは。

久々のブログ投稿。

時々このブログを読んでくれている方がいるようで、その方々にはとても感謝しています。

昨年は2回しか投稿できていませんでした。

仕事とプライベートで日々忙しく、なかなかブログ投稿に時間を割くことができませんでした。

ただ、それは言い訳に過ぎないかなという部分もあり、本当は怠惰な自分がいて、ブログ投稿を面倒に感じていただけかもしれません。

日々忙しいことに嘘はありませんが、日々は充実しており、昨年の5月に新型コロナウイルスが第5類の感染症に引き下げになってからは友人たちとの交流が盛んになり、2023年は実りある年になった感覚があります。

 

久々の投稿ですが、今回は曲ではなく、あるアーティストの著書をを紹介したいと思います。

 

今回は、以前投稿したことがあるアーティスト、B.I.G. JOE氏の、

「監獄ラッパー」を紹介したいと思います。

 

監獄ラッパー / B.I.G. JOE

言わずと知れた、北海道出身、日本を代表するリビングレジェンドであるB.I.G. JOE氏が、2011年にリットーミュージックより刊行した「監獄ラッパー」。

現在は廃版になっており、ネットオークション等で高値で売買されている。

2014年には文庫本としても刊行され、そちらも現在はほとんど中古やネットオークションじゃないと購入できない状況。

最近、この本の朗読を、B.I.G. JOE氏本人が、自身のYouTubeチャンネルで配信されています。

私は、この本の存在は知っていましたが、読んだことはなく、YouTubeで初めてこの内容を知ることができました。

6年間のオーストラリア刑務所での獄中記。そこでの生活ぶりや、獄中からの音源リリースについて綴られて(YouTubeでは語られて)います。

最近はとにかく毎日聴いてしまっています。出勤時、家事をしている最中、ランニング中、筋トレ中などなど、様々な場面でこの朗読を再生しています。

B.I.G. JOE氏の渋い声、そして、聴きとりやすい発声と心地よい抑揚、その描写に合わせた効果音やBGM。これらの要素が非常にバランスが良く、聴き始めると聴き入ってしまいます。そして、B.I.G. JOE氏が体験した情景が、まるで自分が体験していたかのように浮かんできます。

B.I.G. JOE氏が体験したことは誰でも体験できることではないですし、その体験から得られた経験値を、YouTubeで無料で聴けるなんて、こんなにありがたいことはないと思います。

この朗読を聴いてしまっている1番の理由は、何より、”勉強になる・教訓になる”ということです。

この朗読はまだ全編配信終了しておらず、途中までとなっており、あまりにもその先が知りた過ぎて、ネットで現物を探し、購入してしまいました。

とにかく面白い。そんじょそこらの伝記より、自己啓発本より100倍は面白い。これが率直な感想ですが、具体的には、

●ジェイルで生きるための10の戒め

●ザ・犯罪学

が非常に勉強になるし、かなり人間とか社会の核心をついていると思います。

 

まず、”ジェイルで生きるための10の戒め”について。この動画の内容を聴いてもらえると良いです。

youtu.be

B.I.G. JOE氏が監獄の中での生活で体得した十戒

本人も言うように、これは監獄の中だけでなく、一般的な社会生活にも当てはめて考えることができると思います。

個人的には、特に

・1つ目の「自分の運命を受け入れろ」

・5つ目の「他人に期待しすぎるべからず」

が非常に教訓になります。

どっちも当たり前のこともかもしれない。ただ、そんな当たり前のことができない人が大半だと思います。

例えば、自分の身の回りで起きる不遇の出来事、会社での理不尽だと感じる出来事、予期せぬイレギュラーな出来事、これらの出来事を受け入れることができずに、「なんで自分ばかり」などと考えて、苛立ったり、悲観したり、中には精神的に病んでしまう人もいます。自分自身もそんなことがよくあるというのが正直なところです。一喜一憂して、その乱高下に疲弊する。

それは運命や境遇を受け入れていないから。受け入れて初めてわかる視点や、初めて見ることのできる景色があるのに、「こんなはずじゃない」と、その先の可能性も含めて遮断し、現実という今に盲目になる。

運命を受け入れろということは簡単なようで、本当に難しいことだと思います。

それを、B.I.G. JOE氏は、通常では考えられない境遇の中で受け入れ、前向きな視点を体得している。

他人に期待しすぎないということに関してもまさしくそうだと思います。相手に、周囲に期待しているのは自分自身であって、”期待させられる”のではない。期待をもてるようなことを言われて、期待するもしないも自分の意思によるものだから。

ここで、期待するという選択肢をとった時、自分の思い描く結果に至らなかった時、相手に怒りを抱き、時には恨み、時には人間関係が破綻する。自分で勝手に期待したにも関わらず、その期待に沿えない結果の矛先は外側に向く。これこそ矛盾であり、理不尽である。

この戒めをB.I.G. JOE氏から教えていただいて(勝手に)からは、少し気楽になった気がするし、以前抱えていたストレスが軽減した気がします。

人間関係等で苦しむ場合、是非この戒めを思い出し、自分の行動指針にすると良いと思います。

これを苦境の中で体得したB.I.G. JOE氏は本当にリスペクトです。

 

そして、もう1つ、個人的にこちら(ザ・犯罪学)も興味深い内容になっています。

youtu.be

これは社会、犯罪の核心をついている内容だと思います。

とくに薬物等による犯罪においては、被害者無き犯罪であることが多く、正直、そこまで重たい罪を課せられる必要があるのか?と思う部分があります。

違法薬物による被害より、アルコールという合法薬物の被害の方がよっぽど大きいというこはあまり世間一般的には認知されていないし、最近では市販薬によるODなんかも社会問題になっています。合法、非合法に関わらず、”何故そのような過ちを犯してしまったのか”という背景に目を向けない限り、根本的な犯罪の減少に至らないということは犯罪の核心だと思います。

人間は皆平等というが、本当にそうだったとしたら、犯罪者を排他するのではなく、犯罪を犯さなくても生きていける方法を教えるべき。

殺人等、人の命に係わる犯罪に関して、勿論肯定はしませんが、仮に自分の家族が他者から身体的、精神的に大きな傷を負わされた時、相手に殺意が芽生えることがないだろうか?そして、自分がそうなった時に、その殺意を冷静に抑えることはできるだろうか?

そう考えると、誰しも犯罪を犯す可能性というのはあるのかもしれないと思います。

B.I.G. JOE氏が言うように、排他されたら、自分を排他した社会を恨む人が大半だと思いますし、排他される際に刻まれるスティグマやデジタルタトゥーを払拭することは容易ではありません。

私はソーシャルワーカーの仕事をしていますが、仕事をしていてつくづくそう思います。

社会は優しいという謳いながら、非常に冷血。

社会が犯罪者を作り出すと言って過言ではありません。

犯罪とは異なる類かもしれませんが、精神障害だってそうです。精神障害者は、社会から受け入れられにくく、白い目で見られてしまうことが少なくありません。

勿論精神障害は遺伝等の要因もあると思いますが、社会が作り出している側面も少なからずあると思います。うつ病や、うつ病重篤になって自死に至るなんてケースは社会が全く関係していないとは言えないと思います。

 

アメリカでは、「ピアスペシャリスト」と呼ばれる職業があるようです。自身のリカバリーの体験を生かし、リカバリー途上にある人を支援する職業。

この概念は非常に素晴らしいと思います。

ピアスペシャリストは障害福祉に主にスポットが当てられた職業だと思いますが、私としては犯罪もある意味、”前科”という名の障害になってしまうのではないかと思います。前科があると、当人は更生したにも、社会がそれを受け入れない。これでは更生したかいがありませんし、再度犯罪に考えが及ぶ心理状態に至ることもわからなくありません。

犯罪に至ってしまった心境や経緯、犯罪を誘発してしまう環境、ましてや犯罪という方法を取るしか選択肢がなかった人達の経過には目を向けられないことが大半だですが、本当はその経過の中に犯罪防止のヒントがあるのではないかと思います。

B.I.G. JOE氏はそれを、犯罪者の方にも、犯罪を犯す可能性がある全人類にも、その身をもって経験したことから教えてくれているのだと思います。その意味では、B.I.G. JOE氏はラッパーであり、ピアスペシャリストでもあると思います。

犯罪から足を洗い、現在はラッパーとして、その曲でリスナーを奮起、感動させ、現在は飲食店も経営し、奥様と娘様方と幸せな家庭を築いている。

こんな人が語ってくれる話は、教訓以外のなにものでもないと思います。

 

私の好きな歴史上の人物で、フィリップ・ピネル(フランス)という方がいます。

18世紀のフランスにおいて、迫害や処罰の対象となっていた精神障害者達を牢獄で鎖につながれていた状態から解放し、心理療法など人道的な治療で精神障害者達を救った人物です。精神保健福祉における救世主であり、その時代における精神保健福祉のなかで革新的なアクションだったのではないかと思います。

私からするとB.I.G. JOE氏はまさしくそんなピネルと同じ救世主だと思います。

この獄中記で、そして、B.I.G. JOE氏の曲で、助けられる人はたくさんいると思います。獄中で生活する方々、獄中に居なくても生きづらさを感じている方々、前科をもっている方々、そして、私のようなすぐに心が折れてしまう人など。

B.I.G. JOE氏のような人がもっと世の中に多くなれば、本当の意味で世の中はもっと良くなるのに、、と思います。

だからこそ、こんな素敵な教訓を大事にしていきたいです。

 

是非、皆さんにも、この動画を観て、聴いていただき、そして、現物である著書の方も読んでほしいと思います。

この獄中記を知ったうえで、B.I.G. JOE氏の曲を聴くと、言葉の重みが尋常ではないことがわかります。

獄中から発表された、「LOST DOPE」や「COME CLEAN」は勿論名盤中の名盤で必聴の作品ですが、個人的にはこの獄中記を読んだ後に改めて聴いてクラったのが、

One Love Pt.2」です。

www.bigboytoyz.jp

Almost Dawn / One Love, Pt. 2

Almost Dawn / One Love, Pt. 2

  • B.I.G.JOE
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥917

music.apple.com

獄中記でB.I.G. JOE氏の軌跡を知ったうえで聴くことをおすすめします。また、その逆も然りです。

これぞラッパーの最高峰。逆境や苦行など、どんな経験もポジティブなエネルギーに変えて発信する。本当にリスペクトです。

 

本日はこの辺で終わりにしたいと思います。

読んでくれた方、ありがとうございます。

今後も不定期で更新いたしますので、よろしくお願いします。